Q9. MicroPointでは、高周波成分の幾何情報を無視しているため、高周波成分BIASが発生するのでは?

A9 (高桑) はい、発生します。しかし、「BIASの発生=レンダラの欠陥」この前提こそが誤りです。音楽の世界では、可聴域以上の周波数は、フィルタリングされ除去されます。96KHzオーバーサンプリングというのは、ハードウェア実装で発生する折返しノイズを防止するためで、本質的には、可聴域の2倍の周波数でサンプリングすれば充分です。同様に、映像の世界でも、表示解像度に対して、縦横2倍の解像度でサンプリングすれば充分な筈です。にも拘らず、「1ピクセル辺り10000回サンプリングしました」とかいう主張が、恥じることなく現在も繰返されています。

 非常に単純な例を取上げます。”サブピクセル内に高周波成分のオブジェクトA,Bが存在する”と、仮定します。MicroPointでは、サブピクセル内の幾何情報が無視されるので、輝度値の計算は基本、A+Bです。一方、幾何情報を正しく求めた場合、①Aの後ろにBが完全に隠れる ②AもBも全体が見える ③Aの後ろに一部だけBが隠れる ④・・・・という具合に、それぞれのケースで輝度値の計算方法が変化します。1フレーム内のレンダリングに限れば、幾何情報を正確に扱うことに意味があるかもしれません。が、複数フレームのレンダリングでは、カメラやオブジェクトの移動に伴いA、Bの関係は不規則に変化します。結果、アニメーションではストロービング、立体映像では、左右の輝度の相違といった様々な問題を引き起こします。詰まるところ、古典レンダリングでは、これらを複雑なフィルタリング処理により誤魔化します(詰ませたつもりが、千日手)。多少複雑なケース。オブジェクトABCDEFがサブピクセルに存在しても、MicroPointでは、輝度値=A+B+C+D+E+Fとして扱われるのに対し、古典レンダリングでは収拾がつかない組合わせを考慮する必要があります。

 更に自然界では、幾何的な可視/不可視と、実際の可視/不可視は一致しません。AがBを完全に隠していても、Bが物凄い輝度を持っていれば、空気の存在する世界ではスキャタリングによりBが可視になります(極論すれば銀河の後ろに隠れた銀河も重力レンズ効果で可視だったりします)。MicroPointでは、サブピクセル内で幾何情報をもたないオブジェクトを、”サブピクセルスキャタリング”として捕らえ、一貫性のある手続きにより処理します。現代レンダリングのMicroPointでは、最近の論文で頻繁に取上げられる”BIAS VS NOISE”の議論は、不毛ということになります。

 

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  • #1

    Juicer Reviews (Saturday, 04 May 2013 04:14)

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